祝日の午前

祝日の午前
風に揺れるカーテン
陽射しに色があるように錯覚する
輪郭さえもあるように見える
濃淡の影がまっすぐに伸びているのは
窓枠に対して太陽が正面にいるからだろうと固定した頭がふわふわと考えている
昨日一日着ていたスーツが抜け殻のように床に寝ている
亡霊の自分が足音も立てずに大通りを歩く姿を思う
雑木林のかさかさという吐息
遠い潮騒のワンシーン
なめらかな摩擦音をのこして
車は行楽日和にどんな思いで旅立っていく
空をただよう白雲が
狭い路地で遊ぶ子どもらの通せんぼの無邪気さで
直射する陽光を隠しては
またあらわにする
あのひとは元気にしているだろう
あのひとは今
この瞬間
きっと元気にちがいない
ごはんはよく噛んで味わって食し
睡眠も消化も正常だろう
笑うこともあるにちがいない
あのひとはきっと元気だろう
あのひとは今も
きっと
わたしはどうして泣きたくなるのか
こんなにも晴れた日に
なぜこんなときばかり
感情みたいな波が寄せて揺れるのを顔をしかめて堪えている
まぶしい
こんなにもまぶしい
こんなにもまぶしい
光のなかで
わたしが見つめるものは
あのひとの面影でもなく
黄昏の不安でもない
こんなにもまぶしい光のなかで
わたしが見つめるものは
飴色のエーテルのにわかに飛び散る
祝日の午前のありあまる陽
あえかな日々の名残と
予感

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