翼竜の遺伝子

雨になる前の乳白色の空に
山へ向かう一羽のカラスの
濡れそぼった漆黒の翼が
低空飛行で行く
泉のそばの土くれにうつむいて
夏の地虫をさがしていた
澄んだ川面を陽光が
水しぶきと戯れていた
かつて暮らした街でわたしは
かれらとの距離を一段と縮めた
糸屑みたいな細い足が
川底を蹴って飛び立った
まとわりついた砂金の屑を
振り撒きながら飛び去っていった
沈黙の日々にわたしは
かれらとの距離を一段と縮めた
そんな気がしていた
そんな気がしていただけだったか
遠い夏と来る冬の狭間で
翼竜の遺伝子をおそれて
はるかな山並みを目指して
低空飛行で飛ぶ

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