こころの地平を見渡せば

あんなに寝付けなかったのに
目覚めがいいのはなぜか
足先までこもった熱が
急速に冷めてゆく
曇ったガラスににじむ景色を
淡い期待に溶かして
薄れゆく夢のかすかな手がかりも
思わず手放せそうな

小高い丘の上から
まぶしさに眼をしかめて
見渡す限りのパノラマを
澄んだ気持ちで眺める
過去や未来のために
昨日や明日のために
逃れられない今日に
磔にしたこころを

昨日のわたしと明日のわたしが
同一人物であることを
かなしい事実として受け止めていた
流れ去るだけの日々よ
一秒ごと変わってゆく現在を
思い知らせるように
夜明けは刻々と迫る
黄金色に染まる

消せない傷の増えてゆくことが
生きてゆくことなのだと
誰に教えられたわけでもなく
かたくなに信じていた
見えない足枷をはずす
懲役はもう終わった
夜明けはすでに来ている
黄金色に染まる

こころの地平を見渡せば
いくつもの町があり
いくつもの森や川があり
いくつもの道がある
いくつもの池や沼があり
荒廃した都市があり
手付かずの更地があり
花が咲き鳥が鳴く

小高い丘に立って
まぶしさに眼をひらけば
見渡す限りのパノラマを
朝日が包んでゆく
過去も未来もない
昨日も明日もない
それがどうしたというんだ
それがどうしたと

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